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親の介護が始まると、毎月の出費は確実に増えます。デイサービス、訪問介護、おむつ代、通院の交通費——気づけば月5万円、10万円という世帯も珍しくありません。
ところが、その負担を減らす公的な制度はほとんどが「申請しないともらえない」仕組みになっています。役所から親切に「あなたは対象です」と連絡が来ることはめったにありません。知っている人だけが取り戻し、知らない人は払い続ける。これが介護のお金の現実です。
この記事では、介護で「戻ってくるお金」「もらえるお金」を6つに整理し、それぞれの条件・金額・申請先をまとめました。とくに障害者控除対象者認定とおむつ代の医療費控除は、対象なのに使っていない家庭が非常に多い制度です。
ふくちゃん、母のデイサービスとおむつ代で毎月7万円くらいかかってて…。こういうのって、何か戻ってくる制度はないの?
あるよ。しかも1つじゃなく、いくつも重ねて使えるんだ。ただし全部「自分から申請する」のが前提。役所は教えてくれないから、知っておくことがそのままお金になるよ。
全部申請したら、どのくらい変わるものなの?
ケースによるけど、高額介護サービス費と医療費控除と障害者控除を合わせて、年間で10万〜20万円変わる家庭は普通にあるよ。しかも過去にさかのぼって請求できるものもあるんだ。
📌 この記事でわかること
全部読まなくて大丈夫。知りたいところだけ読んでください。
- 介護で戻る・もらえるお金 6制度 早見表
- ① 高額介護サービス費|まずここから確認する
- ② 高額医療・高額介護合算療養費|医療費が多い年は必ずチェック
- ③ 医療費控除|介護サービスもおむつ代も対象になる
- ④ 障害者控除対象者認定|要介護なら申請する価値が高い「隠れ制度」
- ⑤ 負担限度額認定|施設入所なら真っ先に申請する
- ⑥ 介護休業給付金|仕事を休んで介護するときの収入補填
※ 迷ったところから読んでOKです。
介護で戻る・もらえるお金 6制度 早見表
| 制度 | 内容 | 申請先 | 時効・期限 |
|---|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 月の自己負担が上限を超えた分が戻る | 市区町村(介護保険担当) | サービス利用月の翌月1日から2年 |
| 高額医療・高額介護合算療養費 | 年間の医療+介護の自己負担合計が上限超なら戻る | 市区町村・加入する健康保険 | 支給申請可能日から2年 |
| 医療費控除 | 年10万円超の医療費が所得から控除 | 税務署(確定申告) | 5年さかのぼって申告可 |
| 障害者控除対象者認定 | 要介護者が障害者控除(27万/40万円)の対象に | 市区町村(介護保険担当)→税務署 | 5年さかのぼって申告可 |
| 負担限度額認定 | 施設の食費・居住費が軽減される | 市区町村(介護保険担当) | 毎年8月更新 |
| 介護休業給付金 | 休業中に賃金の67%が支給 | 勤務先経由でハローワーク | 休業終了日の翌日から2年 |
① 高額介護サービス費|まずここから確認する
介護保険サービスの自己負担が1か月の上限額を超えたとき、超えた分が戻ってくる制度です。上限額は世帯の所得によって決まります。
| 所得区分 | 月額上限(世帯) |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
| 課税所得380万円〜690万円未満 | 93,000円 |
| 市町村民税課税世帯(上記以外) | 44,400円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 24,600円(個人15,000円) |
| 生活保護受給者など | 15,000円(個人) |
多くの一般的な家庭は「44,400円」の区分に入ります。つまり、1か月の介護サービス自己負担が5万円だったなら、5,600円が戻ってくる計算です。年金生活で住民税非課税の世帯なら上限は24,600円なので、戻る額はさらに大きくなります。
この制度のいいところは、一度申請すれば以降は自動的に振り込まれる自治体が多いことです。対象になった月に市区町村から申請書が郵送されてくるのが一般的ですが、届かない・気づかず放置していたというケースもあります。
請求できる期間はサービスを利用した月の翌月1日から2年。2年以内なら過去分もさかのぼって請求できます。「そういえば申請した記憶がない」という方は、今すぐ市区町村の介護保険担当窓口に確認してください。数万円が眠っている可能性があります。
なお、対象になるのは介護保険サービスの自己負担分だけです。福祉用具の購入費、住宅改修費、施設の食費・居住費、日常生活費(おむつ代など)は含まれません。
「申請書が届いたけど、よく分からなくて放置した」という人が本当に多いんだ。あれはお金が戻る書類だから、必ず出そうね。
② 高額医療・高額介護合算療養費|医療費が多い年は必ずチェック
①でカバーできないのが、「医療費も介護費も、それぞれは上限以下だけど合計すると重い」というパターンです。入院と介護が重なった年は、まさにこれに当たります。
この制度は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、医療保険の自己負担と介護保険の自己負担を合算し、所得区分ごとの年間上限を超えた分が払い戻されるものです。上限額は世帯の所得と年齢区分によって幅があり、おおむね年間19万円〜212万円の範囲で設定されています。
申請先は、介護保険の担当窓口(市区町村)と、加入している健康保険(国保なら市区町村、健保組合・協会けんぽなら各保険者)。通常は市区町村に申請すると「自己負担額証明書」が発行され、それを健康保険側に提出する流れになります。
なお高額療養費制度は2026年8月に見直しが行われているため、現在の正確な上限額は加入している健康保険にご確認ください。「入院と介護が重なった年があった」という方は、対象になっていないか必ず一度問い合わせる価値があります。
③ 医療費控除|介護サービスもおむつ代も対象になる
1年間(1月〜12月)に支払った医療費が10万円(総所得金額が200万円未満の場合は総所得の5%)を超えると、超えた分が所得から控除され、所得税・住民税が減ります。上限は200万円です。
ここで多くの人が見落とすのが、介護サービスの費用も医療費控除の対象になるということ。しかも「同一生計」であれば、別居している親の医療費を子が支払った分も、子の申告に含められます。
医療費控除の対象になる介護費用
| 区分 | 対象になるもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 医療系の居宅サービス | 訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ(デイケア)、短期入所療養介護 | 単独でも全額が対象 |
| 福祉系の居宅サービス | 訪問介護(身体介護中心)、通所介護(デイサービス)、short stay など | 医療系サービスと併用している場合に対象 |
| 施設サービス | 介護老人保健施設・介護医療院=自己負担額の1/2、特別養護老人ホーム=自己負担額の1/2 | 居住費・食費も含めた額の1/2 |
| おむつ代 | 医師の「おむつ使用証明書」があれば対象 | 条件あり(下記) |
| 通院の交通費 | 公共交通機関での通院付き添い分も対象になる場合あり | タクシーは条件付き |
| 対象外 | 生活援助中心の訪問介護(単独)、福祉用具購入費、住宅改修費、日常生活費 | 領収書で区分を確認 |
※「short stay」は短期入所生活介護のことです。介護サービス事業者が発行する領収書には、医療費控除の対象額が明記されていることが多いので、必ず保管しておいてください。
おむつ代の医療費控除は条件を満たせば大きい
おむつ代は年間で10万円を超えることも珍しくない出費です。これが医療費控除の対象になります。条件は次の2つです。
- 傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきり状態であること
- 治療上おむつの使用が必要であると医師が認めること
手続きには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です(文書料として2,000〜5,000円程度かかるのが一般的)。そして重要なのが2年目以降の扱いで、要介護認定を受けている方であれば、市区町村が発行する「おむつ使用確認書」で医師の証明書に代えられる自治体が多くあります。こちらは無料または低額で発行されます。
おむつ代のレシートは必ず保管し、購入日・金額・購入店が分かるようにしておいてください。ネット通販の履歴でも構いません。
おむつ代って、まさか控除になるなんて思ってなかった…。レシート捨てちゃってた。
医療費控除は5年さかのぼって申告できるから、今年から集め始めれば大丈夫。カード明細や通販の購入履歴でも代用できることが多いよ。
④ 障害者控除対象者認定|要介護なら申請する価値が高い「隠れ制度」
これは対象なのに使っていない家庭が最も多い制度です。障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で要介護認定を受けている方は、市区町村長の認定を受けることで、所得税・住民税の障害者控除の対象になれます。
| 区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 障害者控除 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者控除 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
控除額そのものが戻るわけではなく、この額が課税所得から差し引かれる仕組みです。所得税率10%・住民税10%の方なら、障害者控除27万円で年間およそ5万円前後の減税効果になります。特別障害者に該当すれば、さらに大きくなります。
認定の基準は自治体ごとに定められており、要介護度や認知症高齢者の日常生活自立度などを総合して判断されます。「要介護1だから無理」とは限らないので、まずは市区町村の介護保険担当窓口に「障害者控除対象者認定書がほしい」と申請してみてください。申請は無料です。
そして、この控除も5年さかのぼって還付申告できます。過去に認定書を取っていなかった場合でも、その年分の認定書を発行してもらえれば、さかのぼって取り戻せる可能性があります。5年分となれば、20万円を超える還付になるケースもあります。
この制度、本当に知られていないんだ。「障害者手帳がないから関係ない」と思い込んで、何年も損している家庭がとても多いよ。
⑤ 負担限度額認定|施設入所なら真っ先に申請する
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、ショートステイを利用すると、介護サービス費のほかに食費と居住費(部屋代)がかかります。これは介護保険の対象外で全額自己負担が原則ですが、所得と資産が一定以下の方は「介護保険負担限度額認定証」を取得することで大きく軽減されます。
対象になるのは、原則として住民税非課税世帯で、預貯金等の資産が一定額以下(段階により異なる)の方。認定されると、食費と居住費に上限が設定され、施設によっては月に数万円の差になります。
注意点は毎年8月の更新が必要なこと。更新を忘れると軽減が切れて、翌月からいきなり請求額が跳ね上がります。毎年6〜7月に申請書が届くので、必ず提出してください。
また、ショートステイ(短期入所)にも適用されます。在宅介護でショートステイを頻繁に使っている場合も、対象かどうか確認する価値があります。
親の施設入所を検討しているなら、費用の目安と空き状況を早めに把握しておくと、負担限度額認定の申請タイミングも計画的に進められます。相談・資料請求は無料です。
⑥ 介護休業給付金|仕事を休んで介護するときの収入補填
家族の介護のために仕事を休んだとき、雇用保険から休業開始時の賃金の67%が支給される制度です。介護離職を防ぐための仕組みで、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
たとえば月給30万円の方が1か月休業した場合、およそ20万円が支給される計算です。「親の入院・退院・施設入所の手続きで、どうしても平日に動かないといけない」という場面で、分割して使えるのが実務的です。
主な支給要件
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上あること
- 対象家族が「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」であること
- 休業期間中の賃金が、休業前の80%未満であること
対象家族は、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫。申請は原則として勤務先を通じてハローワークに行います。申請期限は介護休業終了日の翌日から2年です。
「介護休業」と「介護休暇」は別物です。介護休暇は年5日(対象家族2人以上なら10日)で、こちらは無給が原則(会社の規定による)。まとまった期間休むなら介護休業、通院付き添いなど単発なら介護休暇、と使い分けてください。
介護のために仕事を休むと収入が途切れると思ってたけど、67%出るなら考え方が変わるね。
そう。介護離職してしまうと生涯収入が数千万円単位で減ることもある。まずは制度を使って、辞めずに乗り切る道を探すのが大事だよ。
自治体独自の制度も見逃さない
上の6つは全国共通の制度ですが、これに加えて自治体ごとの独自支援があります。代表的なものを挙げます。
| 制度名(例) | 内容 |
|---|---|
| 紙おむつの支給・助成 | 要介護度に応じて現物支給や購入券を交付 |
| 家族介護慰労金 | 重度要介護者を在宅で介護する家族に年額10万円程度 |
| 在宅介護支援金・手当 | 市区町村独自の月額手当 |
| 住宅改修費の上乗せ助成 | 介護保険の20万円に自治体分を上乗せ |
| 徘徊高齢者GPS貸与 | 認知症高齢者向けの位置検索機器の貸与・助成 |
| 配食サービス助成 | 見守りを兼ねた配食の費用補助 |
これらは自治体によって有無も金額もまったく違います。親が住んでいる市区町村の「高齢者福祉のしおり」という冊子(多くの自治体がWebでも公開)を一度読んでおくと、使える制度が一覧で分かります。地域包括支援センターに聞くのが最も早い方法です。
世帯分離は慎重に。メリットとデメリット
介護費用の話でよく出るのが「世帯分離」です。親と子の世帯を分けることで、親世帯が住民税非課税になれば、高額介護サービス費の上限が44,400円から24,600円に下がり、負担限度額認定の対象にもなり得ます。
ただし、デメリットもあります。子の健康保険の扶養から外れると親が国民健康保険に加入することになり保険料が発生する、子の扶養控除が使えなくなる、といったケースです。トータルで損得を計算しないと、かえって支出が増えることがあります。
世帯分離は住民票の手続き自体は簡単ですが、判断は慎重に。ケアマネジャーや市区町村の窓口、必要なら税理士に相談してから決めてください。「介護保険料を下げるため」という理由だけを役所で伝えると、手続きを断られることもあります。
申請の優先順位|まず何から手をつけるか
制度が多くて混乱しがちですが、動く順番はほぼ決まっています。
- 市区町村の介護保険担当窓口に行く(高額介護サービス費の申請状況確認/障害者控除対象者認定書の申請/負担限度額認定の相談を一度に済ませる)
- 地域包括支援センターで自治体独自の制度を確認(紙おむつ助成、慰労金、配食など)
- 1年分の領収書を集めて医療費控除を計算(介護サービス、おむつ代、通院交通費)
- 勤務先に介護休業・介護休暇の制度を確認(就業規則と、給付金の申請手続き)
- 過去5年分をさかのぼって還付申告(医療費控除・障害者控除)
①だけでも3つの制度をまとめて確認できます。窓口では「親が要介護◯で、費用の負担を減らせる制度を全部教えてほしい」と伝えるのが一番効率的です。担当者は制度を知っていますが、聞かれないと個別には案内しません。
役所は「聞かれたことには答える」のが基本。だから「全部教えて」と聞くのが正解だよ。
よくある質問
Q. 別居している親の介護費用でも、私の医療費控除に入れられますか?
A. 「生計を一にしている」と認められれば可能です。仕送りをしている、医療費を実際に負担しているといった実態があれば、同居していなくても対象になります。振込記録など、負担している証拠を残しておいてください。
Q. 高額介護サービス費は自動で戻ってきますか?
A. 初回は申請が必要です。対象になると市区町村から申請書が届くのが一般的で、一度口座を登録すれば以降は自動的に振り込まれる自治体が多いです。申請書が届いた記憶がない場合は、窓口に確認してください。請求できるのは2年以内です。
Q. 障害者控除対象者認定は要介護1でも受けられますか?
A. 自治体の基準によります。要介護度だけでなく、認知症高齢者の日常生活自立度なども加味して判断されるため、要介護1や2でも認定されるケースがあります。申請自体は無料なので、まず出してみることをおすすめします。
Q. おむつ代の証明書は毎年もらう必要がありますか?
A. 1年目は医師の「おむつ使用証明書」が必要です。2年目以降は、要介護認定を受けていれば市区町村が発行する「確認書」で代替できる自治体が多くあります。市区町村の介護保険担当に問い合わせてください。
Q. 介護休業給付金は非正規雇用でももらえますか?
A. 雇用保険の被保険者であり、休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上あれば、パート・契約社員でも対象になり得ます。まず勤務先に雇用保険の加入状況を確認してください。
まとめ|知らないと払い続け、知っていれば取り戻せる
介護のお金の制度は、すべて「申請主義」です。対象であっても、黙っていれば何も起きません。逆に言えば、動けば取り戻せます。
- 高額介護サービス費…月の上限超過分が戻る。2年さかのぼり可
- 高額医療・高額介護合算療養費…年間の医療+介護の合計で判定
- 医療費控除…介護サービス・おむつ代・通院交通費が対象。5年さかのぼり可
- 障害者控除対象者認定…手帳なしでも27万/40万円の控除。5年さかのぼり可
- 負担限度額認定…施設の食費・居住費を軽減。毎年8月更新
- 介護休業給付金…賃金の67%、通算93日、3回分割可
まずは市区町村の介護保険担当窓口へ。1回の訪問で3つの制度をまとめて確認できます。そして、過去5年分の還付申告を忘れずに。「もう遅い」と思っている制度が、まだ間に合うことは珍しくありません。
明日、母の市役所に電話してみる。「全部教えてください」って聞けばいいんだよね。
その一言でいいんだ。それと、領収書はもう捨てないこと。1年分で数万円の還付になることもあるからね。



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