成年後見制度をわかりやすく解説【2026年改正対応】|費用・デメリット・家族信託との違いまで

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親の口座が凍結されてから慌てないために

認知症が進んだ親の預金を、介護費用のために下ろそうとしたら窓口で断られた。実家を売って施設費用に充てたいのに、契約者本人の意思確認ができず手続きが進まない。——こうした「資産凍結」は、ある日突然やってきます。

本人の判断能力が不十分になったとき、その財産と生活を法的に守るための仕組みが成年後見制度です。ただしこの制度、使い勝手の面では長く批判を受けてきました。そして2026年4月3日、政府は制度を大きく作り変える民法改正案を閣議決定しています。

この記事では、現行制度の仕組みと費用、よく言われるデメリット、家族信託との違い、そして2026年改正で何がどう変わろうとしているのかを、子世代の視点で整理します。

あんず
あんず

ふく、母の物忘れが増えてきて…。銀行のお金が下ろせなくなるって聞いたんだけど、本当?

ふく
ふく

本当だよ。銀行が本人の判断能力に疑いを持つと、口座は事実上凍結される。そうなると成年後見制度を使うしかなくなる場合が多いんだ。ただこの制度、始めると簡単にはやめられないから、仕組みを知ってから判断したほうがいい。

成年後見制度とは|2つの入口と3つの類型

法定後見:判断能力が落ちてから使う

すでに判断能力が不十分になった方のために、家庭裁判所が支援者を選ぶ仕組みです。本人の状態に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれます。判断能力がほとんどない場合が「後見」、著しく不十分な場合が「保佐」、不十分な場合が「補助」です。

この申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族などで、家庭裁判所が審理のうえ後見人等を選任します。ここで重要なのは、申立人が希望した人がそのまま選ばれるとは限らないという点です。財産額が大きい場合や親族間に対立がある場合、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることが多くなります。

任意後見:元気なうちに自分で決めておく

判断能力があるうちに、「将来この人に支援してもらう」と自分で決めて公正証書の契約を結んでおく仕組みです。誰に任せるかを本人が選べるため、法定後見より本人の意思が反映されやすいのが利点。実際に判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てて効力が発生します。

ふく
ふく

この記事を読んでいる時点で親御さんがまだお元気なら、任意後見や家族信託を先に検討する価値は大きいよ。選択肢があるうちに動けるからね。

気になる費用|申立て時と、その後ずっとかかるお金

申立てにかかる費用

家庭裁判所への申立てには、申立手数料(収入印紙)、登記手数料、連絡用の郵便切手が必要です。金額は数千円程度に収まりますが、本人の判断能力を医学的に判定する「鑑定」が必要と判断された場合、別途10万円前後の鑑定費用がかかることがあります。実際の金額は申立先の家庭裁判所の案内で確認してください。

このほか、診断書の作成料や、申立てを専門家に依頼する場合の報酬(10〜20万円程度が目安)も見込んでおく必要があります。

後見人への報酬は「一生続く」

制度上、最も重い負担がここです。専門職が後見人に選ばれた場合、報酬の目安は月額2〜6万円程度。管理する財産額が大きいほど高くなる傾向があります。仮に月3万円で10年続けば、総額360万円。この負担が本人が亡くなるまで続くというのが、現行制度が「使いにくい」と言われてきた最大の理由です。

知っておくべき5つのデメリット

⚠️ 気をつけたい点

  • 原則としてやめられない:現行制度では本人が亡くなるまで、または判断能力が回復するまで続く
  • 専門職が選ばれると報酬が発生し続ける:月2〜6万円が本人の財産から支払われる
  • 希望した親族が選ばれるとは限らない:家庭裁判所の判断で専門職が選任される場合がある
  • 財産の使い方が制限される:本人のためにならない支出(親族への贈与、相続対策など)は認められない
  • 家庭裁判所への定期報告が必要:親族が後見人になった場合も年1回の報告義務がある

特に誤解が多いのが4番目です。成年後見制度は「本人の財産を守る」制度であって、「家族が使いやすくする」制度ではありません。生前贈与による相続税対策や、収益不動産の積極運用といったことは、原則として認められなくなります。

あんず
あんず

えっ、家族のために使うのもダメなの?

ふく
ふく

そう。後見人は本人の利益のためだけに動く義務があるんだ。だから「親のお金で実家をリフォームして同居しやすくする」みたいな話も、本人の利益と認められなければ通らない。ここを知らずに始めて後悔する家族は多いよ。

【2026年最新】制度が大きく変わります

ここまで挙げたデメリットは長年指摘されてきたもので、ついに法改正が動き出しました。2026年4月3日、政府は成年後見制度を見直す民法等の改正案を閣議決定し、国会に提出しています。

改正案の主なポイント

✅ ここがおすすめ

  • 「終身制」から「期間限定利用」へ:必要な期間だけ利用し、目的を達したら終了できる仕組みに転換
  • 3類型から「補助」への一本化:後見・保佐・補助の区分を見直し、本人の残存能力を尊重する方向へ
  • 「特定補助制度」の新設:11項目について無条件の取消権を付与できる仕組みを創設
  • 後見人選任で本人の意思をより重視:本人の意向や親族との信頼関係を選任時に考慮
  • 報酬体系の見直しを検討:実際に行った事務の内容や回数に応じた仕組みへ

特に大きいのが「終われる後見」への転換です。たとえば「実家を売却するために一時的に後見が必要」というケースで、売却が終われば利用を終了できるようになります。これが実現すれば、制度を使うハードルは大きく下がります。

いつから使えるのか

ここは注意が必要です。改正案は2026年内の国会審議・可決を目指す段階であり、可決後もシステムやルールの準備期間を経て、新制度の運用開始は2028年度中を予定とされています。つまり、いま目の前で親の口座が凍結している家庭にとっては、まだ間に合いません。

ふく
ふく

「もうすぐ制度が良くなるなら待とう」と考えるのは危険だよ。運用開始は早くても2028年度。今すぐ必要な家庭は、現行制度か家族信託で対応するしかないんだ。

成年後見と家族信託、どちらを選ぶべきか

親がまだ元気な段階であれば、家族信託という選択肢があります。財産の管理権限を信頼できる家族に託しておく仕組みで、成年後見のような裁判所の関与や継続的な報酬が発生しません。

成年後見(法定) 任意後見 家族信託
使えるタイミング 判断能力が低下した後 元気なうちに契約 元気なうちに契約
誰が管理するか 家庭裁判所が選任 本人が指定 本人が指定した家族
継続コスト 月2〜6万円(専門職の場合) 監督人への報酬が発生 原則なし
財産の柔軟な運用 原則不可 制限あり 契約内容次第で可能
身上保護(介護契約など) 対応できる 対応できる 対応できない
やめられるか 原則不可(改正で見直し予定) 解除可能 契約終了で可能

表からわかるとおり、両者は競合する制度ではなく役割が違います。家族信託は「財産の管理・承継」に強く、成年後見は「身上保護」——つまり介護施設の入所契約や医療同意の場面に対応できます。実務では両方を組み合わせる家庭も少なくありません。

あんず
あんず

母はまだ受け答えはしっかりしてるの。今のうちにできることってある?

ふく
ふく

あるよ。任意後見か家族信託の契約は、判断能力があるうちしか結べない。だから「まだ大丈夫」と思っている今が、実は最後のチャンスなんだ。まずは専門家に無料相談してみるといい。

申立ての流れ|実際にやることは5ステップ

ステップ1:主治医に診断書を書いてもらう

家庭裁判所所定の様式があります。裁判所のウェブサイトからダウンロードし、かかりつけ医に作成を依頼します。この診断書の内容で、後見・保佐・補助のどの類型になるかがおおむね決まります。

ステップ2:申立書類一式をそろえる

申立書、本人の戸籍謄本、住民票、財産目録、収支予定表、後見人候補者の書類など。財産目録には預貯金・不動産・保険・負債をすべて記載する必要があり、この資料集めが最も手間のかかる工程です。

ステップ3:家庭裁判所に申立てる

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。事前予約が必要な裁判所もあるため、電話で確認してから向かうと確実です。

ステップ4:面接・調査・(必要なら)鑑定

申立人や後見人候補者への面接、本人への調査が行われます。判断能力の程度に争いがある場合などは鑑定が実施されます。

ステップ5:審判・登記

裁判所が後見人を選任し、審判書が届きます。2週間の不服申立期間を経て確定し、法務局に登記されます。申立てから審判まで、おおむね1〜3か月が目安です。

💡 迷ったら、まず無料相談を

成年後見と家族信託のどちらが適しているかは、親御さんの判断能力の状態、財産の内容、家族構成によって変わります。司法書士事務所や信託会社の多くが初回無料の相談窓口を設けているので、比較検討の材料としてまず話を聞いてみることをおすすめします。制度を始めてしまうと後戻りが難しいぶん、事前の情報収集が効きます。

後見人にできること・できないこと

「後見人がついたら何でも代わりにやってもらえる」と思われがちですが、権限には明確な線引きがあります。ここを誤解していると、選任後に「思っていたのと違う」となります。

できること できないこと
預貯金の入出金・口座管理 本人の財産を親族に贈与すること
不動産の管理(居住用の売却は家庭裁判所の許可が必要) 相続税対策を目的とした資産の組み替え
介護施設の入所契約・介護サービスの契約 医療行為への同意(手術の同意など)
年金・各種給付の受領手続き 身元保証人になること
本人名義の税金・公共料金の支払い 本人の代わりに遺言書を書くこと
悪質な訪問販売契約の取消し 日常的な身の回りの世話(介護そのもの)

特に見落とされやすいのが「医療同意ができない」点と「介護そのものはしない」点です。後見人は法律行為の代理をする立場であり、実際の身体介護や、手術の同意といった一身専属的な判断は行いません。手術の同意については、実務上は親族に確認が求められることが一般的です。

また、本人が住んでいる家(居住用不動産)の売却には、家庭裁判所の許可が必須です。施設入所後に空き家になった実家を売る場合でも、この許可を得るプロセスが入ります。売却理由の合理性、価格の妥当性が審査されるため、通常の不動産売却より時間がかかると考えておいてください。

あんず
あんず

医療の同意ができないって意外。じゃあ手術のときは誰が?

ふく
ふく

実務上は親族が求められることがほとんどだよ。だから後見人がついても、家族の役割がなくなるわけじゃない。「財産管理は後見人、家族の判断が必要な場面は家族」という分担になるんだ。

相談する専門家の選び方

司法書士・弁護士・行政書士の違い

成年後見の申立てサポートを扱う専門家は複数います。司法書士は成年後見の実務で最も件数が多く、申立書類の作成から後見人就任まで一貫して対応できます。弁護士は親族間に紛争がある場合や、訴訟の可能性がある案件に強みがあります。行政書士は任意後見契約書の原案作成などで関わりますが、家庭裁判所提出書類の作成範囲には制限があります。

親族間で意見が割れていない標準的なケースなら司法書士、相続争いの火種があるなら弁護士、という選び方が実務的です。

相談前に用意しておくとスムーズなもの

✅ ここがおすすめ

  • 親の預貯金・不動産・保険などのおおまかな一覧
  • 親の判断能力の現状(診断名、日常生活での困りごと)
  • 家族構成と、後見人候補になりうる人
  • 今すぐ必要な手続き(施設入所、不動産売却など)があるか
  • 親自身の意向(本人に確認できる場合)
  • これまでにかかった介護費用と今後の見込み

この6点をメモにまとめてから相談に行くと、初回で具体的な方向性まで話が進みます。逆に何も持たずに行くと「まず財産を調べてきてください」で終わってしまい、時間を無駄にします。

自治体の無料相談も活用する

多くの市区町村が「成年後見支援センター」や「権利擁護センター」を設置しており、無料で相談できます。地域包括支援センターでも初期の相談に応じてくれます。民間の相談窓口に行く前に、まず公的な窓口で全体像をつかんでおくと、話の妥当性を判断しやすくなります。

よくある質問

Q. 子どもが後見人になれますか?

なれます。実際に親族が後見人に選ばれるケースは一定数あります。ただし財産額が大きい、親族間に意見の対立がある、収支の管理に不安があるといった事情があると、家庭裁判所の判断で専門職が選ばれることがあります。また親族が選ばれた場合でも、監督人がつくことがあります。

Q. 一度始めたらやめられないというのは本当ですか?

現行制度では原則としてそのとおりです。本人が亡くなるか、判断能力が回復して取消しの審判を受けない限り続きます。ただし2026年に閣議決定された改正案では、この終身制を見直し、必要な期間だけ利用できる仕組みへの転換が盛り込まれています。運用開始は2028年度中の予定です。

Q. 後見人の報酬は誰が払うのですか?

本人の財産から支払われます。家族が別途負担するわけではありませんが、結果として相続財産が目減りすることになります。本人の資力が乏しい場合、自治体の成年後見制度利用支援事業により報酬助成を受けられることがあるので、市区町村の窓口に確認してください。

Q. 認知症の診断が出ていなくても使えますか?

診断名そのものより、判断能力の程度が基準になります。医師の診断書をもとに家庭裁判所が判断します。判断能力に問題がない段階であれば、法定後見ではなく任意後見や家族信託を検討することになります。

Q. 実家を売るためだけに使いたいのですが

現行制度では、売却が終わっても後見は続きます。この「一時的な目的のために終身の制度を使わなければならない」問題こそが、2026年改正で見直される中心論点です。急ぎでなければ制度改正を待つ選択もありますが、施設費用の支払いなど待てない事情がある場合は、専門家に相談のうえ現行制度での対応を検討してください。

まとめ|「まだ元気なうち」が最大の分かれ道

成年後見制度は、判断能力が落ちた方の財産と生活を守るための大切な仕組みです。一方で、始めたらやめられない、報酬が続く、財産を柔軟に使えないという負担も現実にあります。

2026年4月に閣議決定された改正案は、この「使いにくさ」を正面から見直すものです。終身制の廃止、類型の一本化、報酬体系の見直し。ただし運用開始は2028年度中の予定であり、今日明日の問題には間に合いません。

だからこそ、親御さんの判断能力があるうちに、任意後見や家族信託という選択肢を検討しておくことが、家族にとって最も現実的な備えになります。元気なうちにしか結べない契約がある——この一点だけは、覚えて帰っていただければと思います。

あんず
あんず

今のうちに話し合っておくのが大事なのね。お盆に帰ったとき、母とゆっくり話してみる。

ふく
ふく

それがいちばんいいよ。お金の話は切り出しにくいけど、「元気なうちに聞いておきたい」という伝え方なら受け入れてもらいやすい。焦らず、何回かに分けて話せば大丈夫。

※本記事は2026年7月時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。個別の事案については、司法書士・弁護士等の専門家にご相談ください。改正法の内容および施行時期は今後の国会審議により変わる可能性があります。

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この記事を書いた人|親あんしんナビ編集部(運営: Miyabi)
日本在住の運営者Miyabiと編集部が、公的機関・メーカー公式情報・各ECサイトのレビュー・専門メディアの公開情報を調査して執筆しています。介護・医療・法律の専門的助言ではありません。 コンテンツ制作ポリシー

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