実家に帰ったら、父が廊下で壁に手をついて歩いてたの。手すりをつけたいけど、工事って高いよね…
それ、介護保険が使えるかもしれないわん。住宅改修の補助で最大20万円分まで、自己負担1割なら実質2万円で工事できるんだわん
えっ、そんな制度があるの!?知らなかった…
意外と知られてないんだわん。でも順番を間違えると1円も出ないから、そこだけは絶対に外しちゃダメだわん
介護保険の「住宅改修費支給」とは
要介護・要支援の認定を受けている方が、自宅に手すりを付けたり段差を解消したりする工事をするとき、費用の最大20万円分まで介護保険から支給される制度です。自己負担が1割の方なら、20万円の工事が実質2万円で済む計算になります。
「実家の親が転びそうで心配」という段階で使える、非常に費用対効果の高い制度です。それにもかかわらず利用されていないケースが多いのは、制度の存在自体が知られていないことと、申請の順番が独特であることが理由です。
この記事では、対象になる工事の種類、20万円の正確な意味、そして「これを間違えると支給されない」という申請の落とし穴まで、順を追って説明します。
⚠️ 最重要:工事を始める前に申請してください
この制度で最も多い失敗が「先に工事をしてしまった」というものです。事前申請なしに着工すると、原則として1円も支給されません。良かれと思って先に手すりを付けてしまい、後から知って落胆する——という相談が本当に多い制度です。
対象になる6種類の工事
介護保険で認められる住宅改修は、次の6種類に限られます。
| 工事の種類 | 具体例 |
|---|---|
| ① 手すりの取り付け | 玄関・廊下・トイレ・浴室・階段など |
| ② 段差の解消 | スロープ設置、敷居を低くする、床のかさ上げ |
| ③ 床材の変更 | 滑りにくい床材への変更、畳からフローリングへ |
| ④ 扉の取り替え | 開き戸から引き戸へ、ドアノブをレバーハンドルへ |
| ⑤ 便器の取り替え | 和式トイレから洋式トイレへ |
| ⑥ 付帯して必要な工事 | 手すり設置のための壁の下地補強など |
📌 対象外の例:階段昇降機の設置、浴槽の交換そのもの、システムキッチンの入れ替え、単なる老朽化リフォーム。「自立支援と介護負担の軽減」という目的に合致しない工事は認められません。
20万円の「正しい意味」を理解する
ここは誤解が多いところなので、丁寧に説明します。
20万円は「対象工事費の上限」であって「もらえる金額」ではありません
- 対象となる工事費の上限が20万円
- そこから自己負担割合(1〜3割)を引いた額が支給されます
- 1割負担の方:最大18万円が支給、自己負担2万円
- 2割負担の方:最大16万円が支給、自己負担4万円
- 3割負担の方:最大14万円が支給、自己負担6万円
- 20万円を超えた分は全額自己負担
また、この20万円は原則として生涯で1回分です。ただし1回で使い切る必要はなく、分割して使えます。今回8万円分の手すりを付け、数年後に12万円分の段差解消をする、という使い方が可能です。
20万円がリセットされる2つのケース
- 要介護区分が3段階以上上がったとき(例:要支援2 → 要介護3)
- 転居したとき(引っ越し先の住宅で改めて20万円の枠が使えます)
親が施設から自宅に戻る、実家を引き払って子の家の近くに移る——こうした場面では枠が復活する可能性があります。ケアマネジャーに確認してみてください。
申請の流れ:この順番を守れば失敗しません
| 順番 | やること | 誰が動くか |
|---|---|---|
| ① | ケアマネジャーに相談する | 家族・本人 |
| ② | 施工業者と打ち合わせ、見積書と「住宅改修が必要な理由書」を作成 | 業者・ケアマネ |
| ③ | 市区町村へ事前申請(★ここが最重要) | 家族・ケアマネ |
| ④ | 承認を受けてから着工。完成時に写真を撮影 | 業者 |
| ⑤ | 事後申請(領収書・完成写真を提出) | 家族 |
| ⑥ | 審査を経て指定口座へ振込 | 市区町村 |
最初の一歩はケアマネジャーへの相談です。「住宅改修が必要な理由書」はケアマネジャーが作成する書類で、これがないと申請できません。まだ担当ケアマネがいない場合は、地域包括支援センターに連絡してください。
事前申請に必要な書類
- 住宅改修費支給申請書
- 住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャーが作成)
- 工事費見積書(本人宛てで発行してもらうこと)
- 改修前の写真(日付入り)
- 簡単な図面・平面図
- 被保険者証・負担割合証の写し
- 賃貸住宅の場合:所有者の承諾書
📌 写真は「日付が入っていること」が条件になる自治体が多いです。スマホで撮る場合は日付表示アプリを使うか、当日の新聞を写り込ませる方法が確実です。
「償還払い」と「受領委任払い」の違い
支払い方法には2種類あり、家計への負担がまったく違います。
| 償還払い | 受領委任払い | |
|---|---|---|
| 最初に払う額 | 工事費の全額(例:20万円) | 自己負担分のみ(例:2万円) |
| あとで戻る額 | 保険適用分(例:18万円) | なし(最初から差し引き済み) |
| 使える条件 | どの業者でも可 | 自治体の登録事業者に限る |
| 向いている人 | 一時的に立て替えられる人 | 手元資金を抑えたい人 |
可能であれば受領委任払いを選ぶのが得策です。20万円をいったん立て替える必要がなくなり、実質2万円の支払いで工事が完了します。ただし利用できる業者が限られるため、業者選びの段階で「受領委任払いに対応していますか」と確認してください。
この質問を最初にするだけで、家計の負担が18万円も変わることがあるわん。業者に電話するとき、最初に聞いてほしいわん
どこに手すりを付けるべきか:優先順位
限られた20万円をどこに使うか。転倒事故が起きやすい場所から優先するのが基本です。
優先度①:トイレ
もっとも回数を使う場所であり、立ち座りの動作が伴うため転倒リスクが高い。夜間に何度も往復することも考えると、投資対効果が最も高い場所です。便器の横に縦手すり、または L 字型の手すりが基本形になります。
優先度②:浴室・脱衣所
床が濡れて滑りやすく、裸で転ぶため大けがにつながりやすい場所です。浴槽をまたぐ動作を支える縦手すりと、洗い場での移動を支える横手すりの2本があると安心です。脱衣所との段差解消も同時に検討してください。
優先度③:玄関
上がりかまちの段差は、高齢になると想像以上に大きな壁になります。靴を履く・脱ぐ動作は片足立ちになるため、手すりの効果が大きい場所です。段差が高い場合は式台(踏み台)の設置も併せて検討を。
優先度④:廊下・階段
移動距離が長いため、連続した手すりがあると安心です。ただし費用がかさむので、「壁づたいに歩いている区間」に絞ると予算内に収まりやすくなります。階段は下りが危険なので、下る側に利き手が来るよう配置するのがコツです。
よくある失敗と回避法
- 先に工事してしまった/事前申請なしの着工は原則不支給。「今日ついでに付けますよ」という業者の提案には必ず待ったをかけてください
- 見積書の宛名が家族になっていた/見積書・領収書は被保険者本人宛てが原則です
- 改修前の写真を撮り忘れた/工事が始まると撮り直せません。相談の段階で撮っておきましょう
- 賃貸で大家の承諾を取っていなかった/賃貸・分譲マンションの共用部分は承諾書が必須です
- 要介護認定を受けていなかった/この制度は認定が前提です。まだの場合は認定申請から始めてください
- 介護保険とは別の補助金を確認していなかった/自治体独自の上乗せ助成がある場合があります。窓口で必ず確認を
工事内容や金額に迷ったら、まずは担当ケアマネジャーか地域包括支援センターへ。中立的な立場で、必要な工事と不要な工事を切り分けてもらえます。
まとめ
介護保険の住宅改修は、「転ぶ前」に使ってこそ価値がある制度です。転倒による骨折は、そのまま寝たきりの入り口になります。2万円の手すりが、数百万円の介護費用と親の自立を守ることがあります。
やることは3つだけです。①ケアマネジャーに相談する、②工事前に申請する、③受領委任払いが使えるか確認する。この順番さえ守れば、制度は難しくありません。
父が元気なうちに動いておけばよかった、って後悔したくないもんね。今週末に実家に帰って、ケアマネさんに相談してみる
その判断が正解だわん。手すりは“転んでから付けるもの”じゃなくて“転ばないために付けるもの”だわん。動くなら早いほどいいわん












